書評日記 第14冊
あったとさ 出久根達郎
文春文庫

 今日は予定を変えて(「予定なぞあるのか」と訝しがられる諸兄もおられるかと思うが、・・・実は、「ないことはない」程度にはある。ま、スキャナでとってあるかないかの違いなのだが)今月の新刊&読みたてのほやほやである出久根達郎著「あったとさ」を紹介しよう。

 出久根さんは、ホントの古本屋の主人である。で、その内容も古本屋にまつわる話が多い、というよりすべてがそうである。生憎どこぞの出版社からすべてが出ているわけではないので、この文春文庫な中公文庫なりをあさっていかないと出会えない。ま、とりあえず「あったとさ」は文春文庫の今月の新刊なので手に入りやすいだろう。
 文春文庫の宣伝文句から引用すると、『語りの巧み、人の味わい。直木賞作家受賞第一作品集。古書の周辺を彩る奇妙な人間模様を描く』とある。んー、直木賞作家なんだなってのがわかる。初出が平成3〜5年だから、その辺じゃなかったかな?(今から2年ほど前だったような気がする。)あとは、出久根さんと言えば、本、しかも、古本の話がわんさか出てくる。同じ文春文庫の「漱石を売る」では、夏目漱石の弔文を売るエッセーがある。古本屋に入ったことがある人はわかると思うけど、干からびた本のかおりがしてきそうな文章を書く作家なのだ。あと、中公文庫で「古本綺譚」・「猫のなんとか」(こっちの方は題名を忘れてしまった。)ってのがある。
 あと、余談だけど、紀田順一郎って人もいて、このひとは創元推理社で「鹿の幻影」とか「古本屋探偵の事件簿」という探偵小説っぽいものを書いている。

 ってな具合にちょっとばかりの名詞を覚えて連ねていけば、あなたも「書評」っぽいこと(読んでなくたっていいのだ。)が出来て、直木賞作家を一人(しかも、ちょっとマイナーな分野で)知ることが出来る。まことにお手軽な「しったかぶり」ができるわけだ。ね、読書馬鹿がいると便利でしょ。
 ちなみに、私は出久根達郎と紀田順一郎を今の今までごっちゃにして考えていた。紀田さんの本を読んだとき、「ああ、出久根さんてこんな探偵小説も書けるんだ。でも、ちょっと主人公が冷たいよなぁ」なぞとのんきに思っていたのである。んー、なさけない。

update: 1996/06/11
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