書評日記 第117冊
仕事帰り、ふと、夜空を見上げる。もう、10月半ばなんだよな。息が白くなる季節になりました。
俺、近眼ですけど、オリオン座だけは見えます。いや、オリオン座しか知らないといった方が正しいかもしれません。冬の夜は、空気が冷えて澄み切っていて、星がよく見えます。南の空に、光る星を見ていると、そう、高校生の時に通っていた学習塾を思い出します。バスケ部に入っていて、その後に、学習塾に行っていました。自転車で、かなり走ったところの駅前にある学習塾です。その帰り、自転車をこいで帰ってきて、家の近くまで来て、そして、ふと、夜空を見上げると、星空があって、オリオン座だけが解った、そういう思い出があります。
そういう星空をみていると、あの頃は、何かをしようとして見上げていたのを思い出し、そして、それにはなれなかった自分に、ふと、溜め息が漏れます。
ま、いろいろ、なりたいものは、たくさんあったし、夢はたくさんあった。なれなかったものも、たくさんあって、ちょっと悲しいけど、そう、希望に添えなくて、悲しいけれども、俺のやりたい事は、やっぱり、やりたい事だから、理解して下さい。
あなたの息子は、こう育ちました。あなたの理想ではなかったかもしれません。でも、俺の理想を遥かに越える自分を得ることができました。心より感謝します。俺が、こういう風に育ったのは、あなたのお陰です。だから、誇りに思ってください。そう、俺は、きっと、何者かに為ってみせます。それが、俺の恩返しです。
えーと、何だ。その、母親と絶交中です。はい。一番、近しい人と絶交というのは、ちょっと、辛いです。一つ屋根の下で、自宅で暮らしていますが、3日間、顔さえあわせていません。
手紙を書きました。きちんと、いいたいことを書きました。言葉を使って書きました。たぶん、解ってくれたのでしょう。布団のシーツに、アイロンがかかっていました。
あ、そうそう、本日の1冊は安野光雅の「きつねがひろったイソップものがたり」です。プレゼント用に買いました。1、2巻とあるので、一緒にたのしんでください。
こういう絵本は、いいものです。絵本はね、配色が大切なわけなんです。安野光雅の絵本は、秋の枯れ葉の色です。やわらかな日差しの下にある、ちょっと、かさかさした、枯れ葉の色です。道具屋の本とか、アルファベットの本とか、そういう「遊び」のある絵本もたくさんあります。俺が好きな作家のひとりです。大人でも十分たのしめるので、お薦めです。
あ、そうそう。折角だから、一度読んでから、お渡しします。
・・・となると、古本になっちゃうのかなあ。
update: 1996/09/09
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