書評日記 第125冊
この人を見よ ニーチェ
ちくま書房

 ちょっと堅い話が続きましたね。まあ、ひと休み(?)ってことで、ちょっと柔らかい・・・というか、甘いお話しをしましょう。

 そう、土曜出勤してました。ここ最近、忙しくて、毎晩毎晩、下北沢で午後11時28分の電車に乗ります。この電車、俺の住んでいる海老名駅の2つ先の本厚木駅が終点なので、海老名駅が近くなると、比較的空いてきて座れるので便利です。まあ、どちらかといえば、座れるよりも、早く帰りたいんですけどねえ。会社の都合だからいた仕方がない。

 で、今日も今日とて、その電車に乗って帰りました。電車の中では本を読むのが常でして、ニーチェの「この人を見よ」を読んでました。いろいろね、小説を書きたいなあ、なーんて思ったばっかりに、会社の価値観と、自分の価値観が、すれ違うわけですよ。ま、それは別として、疲れてさ、席にほっとして座って、本を読んでいました。
 そーするとね、前の席にカップルが居るわけだ。人の幸せってのは、なかなかいいもので、あと、俺、基本的にそういうシュチュエーションが好きなんものだから、本を読みながら、ちらちらと観察していわけです。

 白いシャツにGパン、長めのストレートの髪を無造作に垂らしている清楚な彼女と、黒い皮ジャンにちょっと鋲をつけて、鉄の指輪をはめて、でも、あんまり恐い感じはしなくて、髪は真ん中に分けている感じの、そんな彼とが、並んで座っていました。彼女は眠そうで、そう、頭を彼の方に乗せるわけ。ほとんど、押し付けるようか身体の線は、まあ、Hというよりも、ただただ、彼に寄り添っていたい感じが現われて、微笑ましいです。
 で、彼女がさ、彼の膝の上にある彼の手に自分の手を重ねるわけ。彼は、ちょっと、はにかみつつも、そう、彼女の肩に手を回そうと、自分の手を動かしたみたい。でもね、彼女は彼に何事かを囁いて、そのままにするわけ。彼女の手は、彼の手に重なっていて、頭を彼の肩にささえられて、彼はじっとそのまま足を組んでいて、ほんとうに、彼女は幸せそうでした。別に、なにもしなくてもさ、服の上から身体を預けて、そして、安心して眠れる感じ、そういうので彼女は十分幸せなわけですよ。とってもいい気持ちというわけ。彼の体温を感じているのが。
 そして、彼と彼女は、総部台前で降りていきました。手を繋いで。
 んで、面白かったのはさ、その隣に茶色のスカートの女性がいたわけ。カップルは若くて、20歳前後かもしれない。茶色のスカートの彼女は、まあ、俺より、ちょっと下ぐらいか、25歳ぐらいかもしれない。んで、俺がさ、そのカップルを見送って、目を元に戻すと、彼女と目が合ってしまったわけだ。ははは、いいものを見た、微笑ましい、という感じでさ、彼女は、笑いかけてくれました。彼女はね、そういうカップルの隣にいて、どう思ったのでしょうか。そういう風になりたい?、それとも、そういう彼氏がいる?、そう聞きたかったけど、まあ、いきなし聞くのも変な話しなんで、俺も微笑んで、そのままです。はい。声をかけてみた方が良かったかしらん?

 で、本日の一冊は、ニーチェなんだけどさ、まあ、これは、俺にとって重要な思想であるし、そう、「美しい」ものなのですよ。確かにね、傲慢といえば、傲慢かもしれない。「超人」という考え方は、ある意味で、現代社会の中で共同生活を営むためには、危ない思想だし、その中では幸せになれない思想だと思う。でも、俺はさ、なおかつ、彼の思想に憧れるし、それこそが「真実」だと思うし、それは「美しい」ものだと思う。そう、あの彼らが美しいと同様に、この哲学も美しいのだと思う。それは、やっぱり、本物だからじゃないかな、と思う次第です。

 あ、そうそう、読んでいるかどうか解らないけどさ、「裏喫煙日記第1号」を頂きました。ありがとうございます。ぜひとも、今度は、2人の写真で、第2号を頂きたいものです。覚えていらっしゃいますか?、この日の事を。律義な貴方に再び送りましょう。いつまでも、お幸せに、ね。

update: 1996/09/09
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