書評日記 第182冊
唯脳論 養老孟司
青土社

 巷の日記を読むと、「今年もよろしく」という科白が目についた。いや、鼻についたのかもしれない。
 俺の場合、最大の読者は俺であって、諸君諸嬢はそのお裾分けに過ぎない。
 伝えるべきメッセージは明確にメールとか会った時に伝える。
 そんな常識さえ知らない輩に失望するのは無駄な作業のような気がして来た。

 関わりたくない人は俺の目の前に立たないで欲しい。自分勝手な話だが、俺は自己中心に世界を考えている。確かに他人の幸せを願って生きて来たのだけれども、本当にそうするならば俺は「死」を選ばないといけないと思っている。
 半村良描く「妖星伝」では、一番美しい世界とは、荒涼な土地に草木も無く生物が極端に少ない世界のことである。今は、それがなんとなく解かる。

 ちなみに、無断掲載不可だとか妙な著作権を振りかざす人達に一言申し上げておくが、俺が将来作家になって本を書く時に、俺が読んだ感想だとか、あなた方から得た「キーワード」というものはどうなるのだろうか。
 俺の小説を逐一照らし合わせて裁判でも起こす?
 あまり些末な事にこだわらないで欲しいのだが、どんなもんだろうか。

 味覚が無くなってしまっているので、多少苛立っているのかもしれない。
 でも、新年早々、単なる言葉の書き連ねを見せられても困るのだが……と、読者の俺は思う。
 所詮、素人の文章力は、素人に過ぎないのかもしれない。
 でも、伝えたいという気持ちは万人のものだから、それに対して素人も玄人も無いと思っていたのだが、どうやらあるらしい。
 伝えたい内容も無いのに、流行に誘われてホームページを作ってみたり、日記を書いてみたりするのが一番見苦しい。模索しているといいながら、全然模索していないように見える者は最低なような気がする。
 じゃあ、読まなければいいと云う意見もあるだろうが、俺としては、だったらそっちが消えてくれという感じもある。すごすごと消えてしまっては、彼らの独壇場になってしまうし、せっかくの俺のチャンスをふいにすることも無い。俺は伝えたい事が沢山あるのだから自由に書かせてくれと云うしかない。

 うーむ、これじゃあ、解かりにくいね。
 別なる善人が被害を被るかもしれない。そういう時は、「俺の事ですか?」とメールを下さい。「貴方の事ではありません。」とメールを差し上げます。
 
 何処で書こうかと思ったけど、此処に書いておこう。
 「フランチャイズ」の件は、大森さんのが一番面白かった。その次はかおりさん当人だった。後は、読むに値しませんでした。一応、「書評」を冠しているぐらいだから、読解力はあると思います。伊達に多読をしているわけではありません。
 何故、面白くないのか、逐一説明してあげてもいいのだが、どうせ読んでいないのだろうから書かない。少なくとも、俺はその理由を知っている。

 なんとなく、すっきりしないけど、仕方が無い。なるべく直接迷惑が掛からない方法を取るしかない。ただ、せっかく俺が気づいて諸君諸嬢が気づいていない事実を隠蔽したままにしておくのは、俺の本意ではない。むしろ、使命のような気がする。
 解かった者が、解からない者に教える。これは動物社会での集団原理に則っている。

 「擬態」があるが、動物は騙されていることに一生気がつかない。だから、動物界では「擬態」そのものが急速に進化する。
 しかし、人間は「擬態」を見破る能力を持っている。
 正直者は騙され易い。何故ならば、自分で嘘を付かないから、「嘘」に対しての対処を知らないから嘘に簡単に騙されてしまう。逆に、ウソツキは他人の嘘を見破る。また、自分の嘘をあたかも真実のように伝える能力を持っている。それが人間の「擬態」への対処だ。
 個人レベルであれば、さほど問題は起こらない。単に財産を奪われるとか、心を痛めるとか、その程度でしかない。

 だけどね、インターネットでこうやって日記を書いて思想をばら撒いている人達に嘘を言って欲しくないと思うのが俺であって、その擬態に騙されてしまう人達を心配するのが俺なわけだ。

 何度も云うが、嘘を付いていることを自分で知っている者が、更に嘘を言おうという姿勢が気に喰わない。一体、彼は何をしようとしているのか解かっているのだろうか。
 まあね、俺も騙されたクチだから、そう云うのである。
 果たして、彼も騙されたと思っているだろう。俺の事をどう考えたか解からないが、彼自身の身を案じたのだと思う。……でも、一向に彼の姿は良くならない。残念ながら、これ以上無理かもしれない。

 大義名分を振りかざしているように見える?
 でも、それはあなたが此れを正しいと知っているから大義名分に聞こえるのである。
 正しいことが通らない世界を野放しにはしておけないと思うだけなのかもしれない。

update: 1997/01/02
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