書評日記 第193冊
ジェシーの背骨 山田詠美
河出文庫

 実は、オナニーの回数が圧倒的に減ってきている……というか、あんまりしたくない。
 別に女性とセックスをしているからではない。実際、ただ一度だけなのだから、もうちょっと、こう、情欲の部分が高くなってもいいような気がするのだが、他の男性の方はどうだったのでしょうか?
 世の中の平均がどうなのか解からないが、28歳にて童貞遺失だし、28歳にして初キッスというのは、どう考えても思春期を正常に過ごした男性とは思えないのだが……、貞操概念が強すぎた、というところだろうか。
 丸暗記のような繋がりの無い記憶は全然だめなのだが、本から得た知識や昔の記憶のようなものは、ぼろぼろと思い出すことが出来る。果たして、何処まで詳しく……は、やったことがないので解からないが、やたらに物覚えがいいのも困りものである。

 あ、そうそう、ディックの話は、アホくさいので早々にやめた方がいいと思う。ちなみに平均は17センチと聞いたが、身長によるので気にするな、というか、そういうのを気にしたところで、どうにもなるものではないので、悩むのはやめた方がいいです。挿して出れば、それで事足りるわけですから。
 ちなみに、俺は決して巨根ではありません。そう振る舞うのは、それにのみ価値を見出すアホな男性&女性を馬鹿にするためで、性知識については、もっと現実的なものを習得してください、というところ。
 更に加えれば、俺、なかなか出ないです。
 というのも「妖星伝」で「接して漏らさず」を実践してるというか、最近はなんか、インポテンツぎみ。でも、朝立ちはあるのだから不思議なところです。

 最近の俺の読書傾向は、「内田春菊&山田詠美→古典→心理学&科学関係」というループを巡っている感じです。
 内田春菊の「笑い」の部分と、山田詠美の「せつない」の部分を行き来するのは、俺にとって快感なのですが、それらが大江健三郎や心理学に通じるのは不思議なところです。

 諸君諸嬢が「プラトニック・ラブ」にどういう考えを持つかわかりませんが、ただ今、俺と彼女は「遠距離恋愛」というカテゴリーに属するのは確かなことです。
 毎日、メールを交わしているわけですが、先方も当方もそれで充足しているのは、どうなんでしょうか?
 そう、電話ではなくて、メールというのがミソなのかもしれません。当方は、こうやって書評日記を書いたり、長いメールを送ったりしています。
 ただ、毎日メールで「声」を掛け合うことが出来るというところが、俺の安心するところなのかもしれません。実際に声を聞くよりも、「本」から何かを掴みとるように、相手のメールから文章から何かを自分の中から引き出して、相手の気持ちと対応させていく、また、その不足の部分があったとしても、暗黙であるところの背景としての共通の知識(筒井康隆や河合隼雄や谷川俊太郎などなど)が、実際に会わなくても声を聞かなくても、大丈夫だ、という確信に至っているのかもしれません。

 逆に云えば、頻繁に会い、頻繁に声を交わすということは、何かの「ズレ」を感じ、それを埋め合わせようとする作業なのかもしれません。
 勿論、恋愛には様々なパターンがあるので、相手を理解する作業、双方の理解を築くという作業(「井戸掘り」というより、俺は「高み」を築くという上昇志向を勧めます。)は、それぞれ双方の手管により為されるというところなのかもしれません。
 ただ、まあ、貴女と俺とは、「本」を通して重なる部分が多いからこそ、先に交わした言葉によらぬ肌の触れ合い、同時に、しっかりとした自己主張、孤独&一体感の考え方、自由への意志、がこのような状況においても、大丈夫だ、という安心感、そして、それぞれの歩みを認めるところから出てくる諦めを含む楽観、集中的な時間の使い方、を創っているというところなのかもしれません。

 そういう点では、以前の俺であれば、相当辛いはずなのですが、それさえ「楽しい」と思わせる、いえ、心底より「楽しい」と思わせるのは、貴女の感謝の言葉が、俺の心をくすぐるからなのでしょう。

 「プラトニック」だからこそ得られる充足感を俺は味わっているようですが、貴女はどうなのでしょうか。また、諸君諸嬢はどう考えるのでしょうか。
 それは、まあ、実際触れないことによる、兄弟愛であったり、友人の関係であったり、何故か触れられることを極端に嫌がった俺の親子の関係であったりします。

 接するということのみが、何かを産み出すというのは大間違いで、肌を触れ合わないからこそ、それに頼らずに、考えることのできる恋愛、それが「プラトニック・ラブ」であり、知的かつ論理的に「ロマンチック」になれるのではないでしょうか。

 ああ、やれやれ。
 つまりは、「ジェシーの背骨」ってのは、こういう小説なわけですよ。

update: 1997/01/12
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