書評日記 第8冊
美食倶楽部 谷崎潤一郎
ちくま文庫

 谷崎潤一郎と谷川俊太郎は字面が似ている。・・・だから、私はいつもこの2人をごっちゃにして考えてしまう。でも、(多分)谷崎潤一郎の本しか読んだことがないんだろうけど。んー、失礼だね、まったく。

 ま、それはいいとして、この「美食倶楽部」を読みはじめたきっかけは、筒井康隆監修の本「おいしい料理」(だったかな?)の中で、ちょっとさわりが出てきていて、というのが始まりである。とびっきりの食事をしてみようという暇人(だけど金持ち)が中国人の会合(これも金持ちの集まり)に混ぜてもらって、そのぬるぬるとして肉体感あふれるあやしい食事をごちそうになる話なのだけど、んーイイ感じである。
 うちら日本人は、なまじ漢字が読める分、中国料理のメニューを見ただけでも料理がなんとなく想像できるよね。でも、「なまじ」の部分がかえって災いになってホントの中国料理そのものまでを言い当てること(実は、メニューはメニューにすぎないのだから、食事をする人の想像力に味覚を訴える点では、どんな料理に対してもおなじなんだろうが)はできない。むしろ、とんでもない方向に想像がいってしまうことがある。これは、筒井康隆の「薬菜飯店」でも楽しめるかもしれない。
 そうそう、辻静雄を題材にした、海老沢奉久の「美味礼讃」も結構なものである。

 さて、谷崎潤一郎に戻るけど、私は彼がどの時代の人なのかをよくしらないんだよね。いま、よく見たら『大正作品集』とか書いてあるじゃないですか。そーか、内田百閧ニか太宰治と同世代(・・・ちょっと、あやしい)なのか。
 なーんてことがわかっても、いまひとつ、谷崎潤一郎という人物像が浮かび上がって(私の場合は、似顔絵とか)来ない。でも、文体は、「大正アンソロジー」してるよね。

update: 1996/06/05
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