書評日記 第20冊
ちはやふる奥の細道 小林信彦
新潮文庫

 「ちはやふる奥の細道」は W.C.Flanagan著・小林信彦訳である。この文庫が出たときはそう銘打たれていたそうである。
 私が「ちはやふる」に出会ったったのは、NHKラジオドラマであった。そこでは、W=C=Flanaganというミョーな外人役の人が出てきて、小林一茶の奥の細道の謎にせまるというドラマであった。彼は、『小林一茶は幕府の隠密忍者だった。使命を帯びて東北を探索し風土を調べるのだった。そして、佐渡の金山の謎を解明すべくはなたれた。』という大勘違いから始まり、そして俳句を逐一トンでもない解釈・講釈をしてくれるのである。おもしろかったなぁ、うん。何年前なんだろうか。

 さて、つい最近まで、私はホントウにW=C=Flanaganという作家がいるもんだと思っていた。なんかおおぼけな話であるが、嘘ではない。非常に日本に精通していて俳句を解して、なおかつ、トンでもない勘違いというお遊びのできる外人がいるものと思っていた。ま、それが小林信彦の狂言だと解っても、それはそれで面白い。
 ってなわけで、実はこの本、ほとんど読んでいない。ラジオドラマの印象が強すぎて読む気にならないのである。他に読んだのは、やくざパロディの「唐獅子株式会社」、そして映画にもなった「紳士同盟」(こっちの方は内容をよく覚えていない)。
 これぐらいしか読んでないから、小林信彦がパロディ作家(なんて分野をかってにあてはめては困るのだが)と断言はできないし、すべてがこんな調子で進められているのかは、私にはわからない。でも、そうだとすれば、横田順弥と並んで本棚に置いておける(なんて云うけど、私の本棚は横積みぎっしりである。だから、目的の本がまったく見つからない)作家なのかもなぁ。しかし、なんで読まなかったんだろう。確か「紳士同盟」が映画になってヒットしてしまったから、あ、これはうさんくさい、とか思い込んでしまったのかもしれない。ま、機会をみて何冊か読んでみよう。

 ああ、なんか批評なんだか、私の個人的感想なんだか・・・え?、どちらも同じだって?、ま、そうなんですけど。もうちょっと読み込んでから紹介した方がよかったかな。「唐獅子株式会社」は、当時のパロディ(パロディというものは時代の流れによって陳腐化してしまうから、解説が必要になる。という解説を筒井康隆自らが「唐獅子・」の解説に書いている。)がたくさん盛り込んであって、かつ、やくざパロディが含まれていて面白いんだけど、小林信彦という作家の底がここで終わるわけないハズだし。
 んー、今日はちょっと失敗したかもしんない。でも、ま、「おもしろいかもしんない」程度には伝わったかな?

update: 1996/06/17
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