人に読まれる文章を書きたい者にとって、なんらかのテキストは必要なのでしょうか。決して少なくはない読書量の中で思うのは、やっぱり「必要」ではないか、です。
そうそう、ひとこと断っておきますが、別にwww日記をさしている訳ではありませんよ。www日記の場合は、いろいろな手法を駆使して、読者を獲得しようと(そうしようと、しているならば、ですが。)しているわけですから、この本の例はあてはまりません。
ま、俺自身に向けてというところでしょうか。そして、きちんとした文章を書きたい人のために。
筒井康隆の「短編小説講義」(岩波新書)は、かつて、俺がストーリー漫画を書こうとしていた頃に買った本です。ま、漫画の方は、ストーリー自体に引きずられてしまって自滅してしまった感じなのですが、短編小説を書きたい人や、もっと短編小説を味わいたい人にはお薦めの本です。
内容の方は、本当に講義のようです。ひとつひとつの古典とも呼ばれる短編小説を例にとり、解説していきます。折りしも、筒井康隆が「文学部唯野教授」を書いた後なので、そのあたりも併読すると理解が深まるかもしれません。参照用に使っている本は、すべて岩波文庫で発行されているものばかりです。というのも、当時の俺は、これを買い揃えました。そして、一冊ずつ読みました。そのぐらいの手間は、ま、惜しんではいけないと思いましたので。
ちょっと、作家を並べてみましょうか。
- ディケンズ「ジョージ・シルヴァーマンの釈明」
- ホフマン「隅の窓」
- アンブロウズ・ビアス「アウル・クリーク橋の一事件」
- マーク・トウェイン「頭突き羊の物語」
- ゴーリキー「26人の男と1人の少女」
- トオマス・マン「幻滅」
- サマセット・モーム「雨・赤毛」
- ローソン「爆弾犬」
当時の俺には、見慣れない作家ばかりでした。諸君諸嬢も、名前ぐらいは知っていると思いますが、あまり読んだことはないと思います。ま、こういう本をたまーに読んでみる(当時は、立て続けに読んだけど)のも一興かもしれません。
古典にあたる時というのは、このぐらいのキッカケがないとなかなか読まないものです。