書評日記 第127冊
考え続ける事は、そう、俺は常に考え続けてきました。別に題材が何であってもかまいません。学術的なことでなくていいんです。ただ、目の前にあるもの、聞いたこと、話したこと、そんないろいろな事を、そう、小学生3年の時から考えつづけて来たような気がします。
俺のとって、考えるって行為はごく普通の事なのです。ただし、ひとつの物事について考えるだけでなく、いろいろ思考を広げていきます。ある意味では、脳の皺のひとつひとつをなぞるように記憶と思考を繰り返しています。
時々、なんですけど、自分が「夢」の世界の住人なような気がします。生きている実感がしないのです。自分は其処にいて、歩いているはずなのに、自分が自分でないような気がして、誰かの「夢」の中に出てくる自分を感じています。
考える事を続けると、肉体的にどうのこうのしようという気がなくなります。あんまり良くないのですが、まあ、考えているだけで十分という気分になります。空想するというよりも、いろいろな理論を頭の中で弄び、組み合わせを楽しみます。色々と組み合わせた理論は、ひとつの理論を組み立て、また、再び、その理論を弄び始めます。
思考実験をしていると、頭の中の出来事と、現実の出来事との違いがよくわからなくなります。思考の中での言動が、そのまま現実で起ったことのような感覚に囚われます。最近ではありまりしなくなったのですが、人と話すときに、前もって、頭の中でその人と話すようにしていました。前もって話しをしているその人は、頭の中で、非常に都合よく動いてくれます。で、いざ、人と話そうとすると、既に話しをしてしまったものと勘違いして、それが現実に話しているものとして、話しかけてしまうことが多々ありました。口ごもる時は、そういう時でいた。何故か、最近では無くなったけど。
人と話しをしている時や、人の話しを聞いているときは、頭が止まっているような気がします。ふと、そういうものに気付いて、思考をしはじめるときがあります。こうなると、自分との対話だけに集中してしまって、人との会話がおろそかになります。尤も、これは、自分に話しかけてくれる人は別です。隣で話しているのを聞いていたり、大学の講義を聞いていたりする時に起ります。そんなの時は、ずーっとメモをとっています。字を書くのはかなり早い方なので、自分の思考と同じ速度、いや、字にすることで自分の思考を確かめながら、進めていきます。だんだん、手が疲れてきて、やめます。そして、居眠りをしてたりします。
こうやって、くだらない文章を書いているときも、あんまり状態は変わりません。なんか、長い文章を情熱を以って書いているような気もするでしょうが、そんなことはありません。俺の考えていることをそのまま書いているだけです。それほど、俺が文章を書くことは自然な行為であり、考えつづけるという行為は、自然な行為なのです。
そう、他の人もこうやって考えているのかと思ってた。そういう科白を昨日、聞きました。吃驚しました。同じことを考えている人が、そう、其処にいました。よく母親に云われます。「あんた、そんなに考えていて疲れない?」、いえ、俺は、考えが止まってしまうときに異常な恐怖を覚えます。まさしく、息が止まってしまうような気がします。ふと、何も考えていない時間というのが時々訪れます。頭が空虚になって、その空ろな気分に浸っている自分に気付いて、再び考えはじめます。一体、あれは、なんなのでしょうか。
諸君諸嬢は、どうなのでしょうか?、考えていますか?、それとも、考えることに疲れるのでしょうか。時々、そう、時々思います。こんなことを考えていないで、普通の社会生活を送ったらいいのに。何も考えずに過ごせれば、どんなに楽だろうか。人の感情に鈍感になれば、どんなに楽だろうか。自分の事を思って行動できればどんなに楽だろうか。でも、違うんです。考えるという行為は「人間」にとって不可欠な行為なのです。
本日の一冊はユーゴーの「狂人日記」です。主人公の彼は、ごく普通の事務員でした。でも、その生活に耐えられませんでした。そして、妄想をしました。自分を王様だと思いました。彼の妄想はどんどんエスカレートしました。彼は、とうとう、妄想を現実に紛れ込みはじめました。そして、彼は牢屋に繋がれました。彼はそれでも妄想を繰り返しました。
俺の妄想は、妄想にすぎないのかなあ、と思う時があります。現実社会で確実に生活をしていた方がいいと思う時があります。そういう「価値観」の狭間に落ち込むとどうにもこうにも出来ない苛立ちを覚えます。思考が停止し、どちらの価値観による行動も停止してしまいます。そういう思考停止状態は恐ろしいものです。で、再び考えます。どっちがいいのか?、やはり、おれは、こっちがいいです。あちら側に戻りたくはありません。
そう思って、今日という日を終えます。
update: 1996/09/09
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