書評日記 第166冊
自己不安の構造 石田春夫
講談社現代新書

 みやちよさんが、俺の事を「心配」してくれてるそうなので、俺は自分の事が心配になった。フリートークで妙な発言をしだすし、確かに、「極悪稀Jr」を演出しているわりには、ちょっと暴走しすぎな感じがしないでもなかった。
 で、海老名の家に帰るのやめて、阿佐ヶ谷の家に泊まった。家族に当たり散らしそうな気がしたし、再び家でインタネットに繋げると何か恐ろしいことをしそうな気がしたからだ。本能的に外部から自分を遮断することにした。

 本をばかすか買った。ゲームセンターに二時間以上いた。でも、内部からふつふつと沸き上がる怒りは納まらなかった。何故、立花さんにあのような言い方をしたのか解からなかった。まあ、常々思っていたことだから構わないのだが、もうちょっと言い方があったろうと思った。あれではただの喧嘩腰でしかない。伝わるものも伝わらないのでないだろうか。そんな気がした。でも、怒りだけはおさまらなかった。何に対してそんなに怒っているのか、自分ではよくわからなかった。
 ふと、深夜0時に近くの本屋に行った。その本屋は品揃えが良くて、今後愛用しようと思っている本屋だった。なんとなく本棚を眺めて、そして、講談社の現代新書の前で止まった。
 俺は理系だから、文系タイプの古典なり古文なりに疎い。また哲学や心理学も体系的に習ったことはないので、いきなり原典に当たっても当惑することが多い。そういうものを解説するというか、読み出すキッカケになるのが、この「現代新書」のシリーズだった。ただ、最近は買っていなかった。というのも、この手の解説書というものを避けていたからだ。何故避けていたのかわからない。ただ、大量の小説を読むということを習慣としていたからに過ぎないかもしれない。

 果たして、この本「自己不安の構造」を手にとった。こういう本はあまり買いたくなかった。お手軽な感じがして嫌だった。自分が不安になっている時に、こんな本を手にとるのは、自分が小さくなったみたいで嫌だった。
 でも、何故か買わなくてはいけないような気がした。どうしても、買わなくてはいけないような気がした。
 そのままレジに持っていった。カバーはつけなかった。直ぐにでも読みたかったからだ。

 家に帰って、早速、読み始めた。本当は、「書評日記」とか「日記物語」の書き溜めや、この不安定な状況を利用して「童話」でも書くつもりだったのだが、この本はどうしても読まなくてはいけないような気がした。

 読み進めると笑いが出た。なってこった。俺は完全に「分裂症」だ。やたらに正義感が強くなってしまうのも、やたらに饒舌になってしまうのも、やたらに物事を2分するのも、みな「分裂症」の症状だ。うははははは。参った。
 同時に、「神経症」であることもわかった。ここ「極悪稀Jr」はヒステリー的人格を演じることに決めたのだが、いやはや、まったくもって、「極悪稀Jr」を演じている時は、子供っぽい表現をしたり、妙に気取ってみたり、注目を浴びるようにしたり、なんともはや、「神経症」そのものであった。

 いやはや、勘弁して欲しい。なんというか、最近の俺のは「時間軸」が狂っている。どうも行動を起こした後に「本」から知識を得る。しかも、1日以内に起こることが多い。
 まったく、もう、俺という人間は何かに操られているような気がする……、というのも「分裂症」の症状なんだよな。
 こういうとき、俺は何をしたいのかさっぱりわからなくなる。俺という人間は、俺の意志で動いていないような気がする。
 まったく、勘弁して欲しい。

 果たして「分裂症」タイプに偉大な小説家が多いことをご存知だろうか。自らの不安を自らで探求することにより、何かを掴んだ人が多いことをご存知だろうか。俺はご存知でなかった。薄々知っていたが、こんなにも多いとは思わなかった。
 モンティーニュ、パスカル、ルソー、キェルケゴール、ニーチェ、道元、芭蕉、良寛、そして、ボードレール、ミュッセ、ポー、リラダン、ボードレール、太宰、三島、などなど。

 確かに俺は人並みの生活は送れまい。幸せな社会生活は送れないと思う。どうしても、集団が嫌になってしまうし、仲良しというのが嫌になってしまう。
 ならば、そう、そういう素質があるのだから、そういう風に生きようでないか。そう、「悪文」ではあるけれども、斯くある相手にはびんびん響いているらしいことが解かる。
 文章の表面上の云々なんて糞食らえだ。俺は、俺の思ったことを書く。俺がこうやって書いている姿こそが真実である。
 だから、そう、俺は大丈夫だと思う。また、ひとつ「確信」が持てるようになった。

 いやはや、まったく、有り難うと云うしかない。
 サンクス、万歳、万々歳。

 蛇足ではあるが、不機嫌さん。これが俺の本当の私小説だけど、面白い?小説よりも小説らしい人生を送っている奴の私小説は、まあ、凡人の想像力を遥か上にいっているんだがなあ。

update: 1996/12/12
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