書評日記 第407冊
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中世の食卓から
石井美樹子
ちくま文庫 ISBNISBN4-480-03298-3
最近、女性の著者が目に付く。そして、それを買うことが多い。これもその一部のような気がする。
開高健が『食べ物の話は多いけれども、酒の話は少ない。これは酒の場合は飲んで酔ってしまえばそれで満足してしまうからだろう』と言っている。実際、酒に関する本はすくない。最近はワインブームなのか、文庫本でワインを対象にしたものが多く出ている。そういえば、フランスの核実験によるフランスワイン不買運動はどうなったのだろうか。新聞もTVも見ないのでよくわからない。いや、新聞やTVを見てもわからないかもしれない。
それは兎も角として、中世の食卓は基本的には現在の食卓には及ぶべくもない貧しさであった。かって、料理番組で中世貴族の食事のレシピを再現したTV番組があったけれども、あまりの不味さ・味気無さにコックがかなり工夫を強いられていた。
よく知られているように胡椒は貴重品であり、砂糖はいまだ料理には使われていなかった。グインサーガで出てくるけれど、砂糖づけのボンボンや、マリー・アントワネットの『菓子をおたべ』は、貴族でさえ望むべくもなかった。
そうなると、当時の日本人の方が生で食べられる分、食生活はよかったような気がしないでもないが、本当のところはよくわからない。ただ、作物の生産性が高まったから、皆の口に米が入るようになったのは確かなことだと思う。中世という時代が封建的であり、貴族と農奴という形で「搾取」されていたから飢えていた、という考え方はあまり適切ではない、というところだろう。
現在のフランス料理のように味に凝り希少性を高めることができないのであったから、彼等は量を重んじた。テーブルに溢れんばかりの肉料理が並ぶ。ただ、茹でるか焼くかしかなかった。野菜は下賎の食べ物であった。栄養バランスなぞ考えるわけがなく、喰いまくった。このあたりは、ギリシャ貴族が吐きながら喰ったのと対して進歩してないような気がする。
つい最近(20年前)まで、太った子供は豊かさの印であった。カップラーメンなりポテトチップスが発明されると、一人っ子は自然と太り始めた。だから、逆に痩せていることが裕福さを誇示するものであった。
今は、ダイエットにいそしむ。食べるものを減らせば自然に痩せるものを、食べながら痩せようとする。
そう、50キロの時は便秘に悩まされたが、53キロになった今、便通が良い。たぶん、私にとってこのラインが栄養消化と余剰滓のバランスが良いのかもしれない。
男性にとって、中年太りは貫禄があるという言葉に置き換えられ続けるのだろうか。渋谷に徘徊する痩せっぽっちの大学生を見て思う。
update: 1998/2/1
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