戦争を演じた神々たち 大原まり子
アスキー出版局 ISBN4-89366-255-4
大原まり子のSFにはスタイルがある。これは新井素子の小説が新井素子のファン以外には理解し難いもの――それが文学賞を取るに値する普遍性(?)を持っているとしても――を持っている、とは異なるスタイルである。カート・ヴォネガットのSF小説を読むように大原まり子のSF小説にのめり込む。作家自身が持つ文章のリズムに読者が乗ることを好む、ということだろう。
ただ、私は「戦争を演じた神々たち」の各短編を読みながら思ったのは、確実に大原まり子は面白い小説を書くひとだと確信したのと同時に、ひとつ疎外されてしまえば乗り切ることのできない壁が作品を書いた大原まり子と読者である私の間には存在している、ということであった。「天使が舞い下りても」も「宇宙で最高の美をめぐって」も、私にとっては少しメルヘンチックな気もし、「けだもの伯爵の物語」はレイ・ブラッドベリを思わせる。草野仁やアシュラ・K・ルグウィンのような短編は、フィリップ・K・ディックや筒井康隆とは異なる。そういう障壁の内側に大原まり子の各短編があるように思えてならなかった。
無論、如何にも大原まり子らしい小説――それは私が「銀河ネットワークで歌った鯨」を一番に好むからだと思うが――が詰まっているという点で「戦争を演じた神々たち」はピカ一には違いない。だからこそ、ひとつのカテゴリを感じてしまう。
そう、この短編集は大原まり子は何らかの小説を好み、それを模倣/追随しようとして書いた結果できあがったものである。だからこそ、大原まり子臭は決して拭えるものでもないし、だからこそ、読者が一番耽溺できる短編集だと思う。私は一気に読み終えたし。